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歴史

2011年12月26日 (月)

市立中央図書館へ

私は市立図書館に3冊の本を予約している。『アラブ革命はなぜ起きたのか』と『幻想の平和』にしても11月中旬に予約して、12月16日正午時点でまだ何も音さたがない。とはいえ、この2冊は借りている人が返してくれれば、すぐにでも読める状態にある、といっても構わない。しかし何というか、11月時点からこの2冊は予約者リストに複数人が名を連ねているように思えた。それでどうして12月のクリスマスまで終わったこの時期に借りられないのかが、非常に不思議である。

前者の本は、露米の衰退を人口学の観点から予言しているエマニュエル・トッドの著作であり、後者は戦略学者の奥山真司氏が翻訳したということで、それなりに日本でも知名度があると思われる(特に奥山博士が訳した本は大抵が市場に出回る。岩波書店のように買い切りではないので、そこそこ知名度はあるであろうし、実際我が市の中央図書館には『幻想の平和』を含めて分厚い本が3冊入庫している)。

このあたりはまだ我慢できるが、我慢できないのは7月末に予約を入れた『Google英語勉強法 お金をかけずにネイティブから学べる』である。確か予約当時に8人並んでいたと思われるが、年末のこの時期に、ウェイティングサークルにはまだ5人の名を連ねている。この本だけ誰かに盗まれたのか、それとも図書館当局が本気で貸すつもりはないのか、と我が邪念は疑心暗鬼になっている。

こうなれば市立図書館の愚痴を吐きまくるだけである。というのは、平日午後7時まで開館、土日祝は5時まで開館で、祝日は原則開館、というのは、地方都市の図書館にはよくあるが、周囲の図書館は土日祝も午後7時まで開館しているところもあり、すごいところになると午後10時まで開館、床まである始末である。それに休館日も月一回連休させて、それ+α程度が閉館日というのも普通にある。なぜ東京にあって、なぜ企業城下町にあって、このようなざまなのだろうか。それから多摩地方の図書館と23区内の図書館の違いなのであろうが、前者はその都市に在住・在学・在勤者をメインに貸し出しているが、後者はどこに住んでいても(稚内に住んでいても、与那国島に住んでいても―というのは理論上の話だと思うが)図書館から本を借りることができるという違いがある。

我が町の図書館は、現代型の図書館の草分けとして、図書館関係者には評判が高い。ただ、「草分け」ということで、何となく昭和40年代の運営で続けているうちに、周りの都市の図書館がサービスを強化して、結果として現在においては我が町の図書館は運営面で周囲と比べて著しく劣るようになってしまった(いや、図書館員個人は皆さん優しい方々ですよ)。我がの市長が保守派で、図書館などというお金を生まないところにあまり大金を投じたくはないのだろうが、ひとつずつ直してもらいたいものである。

それから、我が町とは無縁の話であるが、道南に住んでいる某軍学者は、日本の図書館事情の貧困さを嘆き、その改善を期待しているみたいだが、そもそも日本みたいに一冊あたりの書籍代金がだいたい欧米より安いので、私のような特殊事情を抱えているもの以外にとっては、ある分野で趣味でも仕事でも知識を深めたいものは、図書館で借りたりなどせず、自分で必要な書籍を買い集めるのが常識である。

それから同じく軍学者にお知らせしたいのは、千葉県ならともかく、東京の各市の図書館員に、司書を採用してずっと彼/彼女に本を扱わせると信じ込んでいるみたいだが、都下の図書館では市役所の一セクションとして扱われており、単なるジョブローテーションに一部に図書館勤務が入る、という形式を取っている。詳しくは辻由美著『図書館であそぼう 知的発見のすすめ』(講談社現代新書 1999)を読了して欲しい。

2011年1月13日 (木)

ゴトビ監督は元ペルシャ人&『マルチリンガルの外国語学習法』より

多言語話者(「ポリグロット」とか「マルチリンガル」と呼ぶ)を何となく目指している私は、実際に多言語話者の勉強に関する本を書店で見つけると買ってしまう傾向がある。その中で今回は『マルチリンガルの外国語学習法』(石井啓一郎著・扶桑社新書)の中に書かれていた内容を取り上げたい。この本は安易に多言語習得ができるという考え方に警鐘を鳴らしている。ロマンス諸語であるスペイン語・カタロニア語・フランス語・イタリア語がいかに違うかを綿々と唱えている個所さえある(第五章)。

著者が多言語話者になった経緯は、あくまで文学の習得がきっかけという。この著者の使える言語リストの中にはペルシャ語が含まれていることが重要である。ただペルシャ語に向かう筋には紆余(うよ)曲折があり、アフシン・ゴトビ清水監督を亡命させたイラン革命が著者のマルチリンガルとなったきっかけではあるが、日本の大学でイスラム学を教える大学は数が少ない上に偏差値が高いということで上智大学の出身となったわけであり、そこは当然ミッションスクールなので、キリスト教サイドから見たイスラム教なので、先に習得した言語はスペイン語やフランス語である。そこから東に進んで、最後にたどり着いたのがペルシャ語というわけだそうだ。そしてそれらを学んだのはほとんどが文学の研究目的であるが故ということである。この著者が味わわされたものが、下で詳述する「タァーロフ」である。

ペルシャ人の社交儀礼に「タァーロフ」という習慣がある(pp90-93)。まぁ、日本でいうお世辞に近いものであるが、あえて上記のようなペルシャ語でこの著者は紹介している。まぁイランに限らずどこの国でも少しその国の公用語が話せる人間にこそ「~語が上手ですね」というのは(多分)世界共通なものだと思うが、この「タァーロフ」は単なるお世辞以上の意味を持っているような気がする。

アジア杯終了後に来日する清水エスパルスのゴトビ新監督は果たしてそのような習慣を身につけているペルシャ系アメリカ人である。エスパルスにゴトビ監督が着任してからはどのような言動をするであろうか。ゴトビ監督が主(ホスト)で、選手が従(ゲスト)な訳であって、ホストたるペルシャ系の人間が実際に「タァーロフ」を発揮したらどうなるであろうか。

ある選手にある種の直すべきアクションがあるとして、それを指摘するというよりは、別の長所たるアクションを褒めるということになりはしないだろうか。昔のプロ野球で元阪急・日本ハムの上田監督が「え~で、え~で」と褒める選手が真っ先につぶされていくという現象があったが、我が清水エスパルスでその再現が起きる、というのは杞憂(きゆう)であろうか。もちろんそうであって欲しいし、ゴトビ監督は教育のほとんどを合衆国で受けている(大学はUCLA)ので、率直な欠点指摘と重要な修正の方法を伝授することができると思いたいが、現在イラン代表監督をしているゴトビ新監督は、やはりペルシャ人としての行動様式を身につけている可能性が高い。

まぁ最近の記事で、ゴトビ監督は策士かつ戦術家であることを証明したが、選手の育成については、今のところ不明である。UCLA在籍中からサッカー指導者/アナリストの道を歩んでいるゴトビ監督ならば合理主義を発揮してくれるだろうと信じたい(UCLAでは機械工学を学んだという)。

2010年9月29日 (水)

日本における「シナ呼称問題」

普通の日本人が「中国」と呼んでいる国のことを執拗に「支那」と呼べという論者が数人いる。渡部昇一・兵頭二十八・呉智英が有名である。

私はその説を理解しつつ、違和感を覚えている。まずは「支那」説を要約してみよう。ヨーロッパ言語ではかの国のことを大抵古代王朝の「秦」に由来するChina(英・独)、chine(仏)などと呼んでいる(ちなみにロシア語ではКитай、これは北方諸語では多用されている)。これには誰も抗弁するものはいない。ならば日本語でも同じ由来の支那・シナと呼んでも差し支えない上に、中国というのは「世界の中心にある国」という意味だから不適当である、ということである。

その理論には瑕疵はないと思うが、もうあそこにある国は百年近く「中華民国」「中華人民共和国」という名前の国である。もちろん中華民国時代(もちろんこの国は現在も台湾島とその周辺の島嶼部に存在しているが)にこそ「支那」という用語が多用されたわけだし、私が時たま「合衆国」「連合王国」と呼んでいる国は通常は「アメリカ」「イギリス」と呼ばれ、それで十分に通じている。

では私はどんな違和感を持っているのか。「中国」というと、「シナ呼称論者」には「世界の中心にある国」を連想させるようだが、私には「大英帝国」「大日本帝国」に対する「中くらいの国」を感じさせる。もちろん「中華民国」「中華人民共和国」の略称としても十分に通じると感じる。ただ、モノの本で読んだ話では、日「本」国に対する「支」那という感じがするので中華民国の外交官が「支那呼ばわりはやめてくれ」と抗議したという話が残っているそうだ。だから一部の「シナ呼称論者」は漢字では書かずにカタカナで「シナ」と書く。

私の「中国呼称論」は上記の通りなので、「シナ呼称論者」の文章を引用する時以外は中国と書く。ただこれが「中国」ではなく、「中華」と呼べと両国が抗議してきた場合(これだって両国の国号の略称には違いないから)は「シナ呼称論者」の論理を借りて私でさえ反論するであろう。「中華」という呼称にこそ「世界の中心にある皇帝が生わすところ(今は皇帝ではなく主席と総統であるが)」という意味をたっぷり含んでいるからである。

私はあまり好きではないが(Wikipediaの彼の項目を読んで、彼が最初の妻になしたことを見て欲しい。あれでは子供が可哀想だし、私なら自殺しかねない)、司馬遼太郎という高名な文人がいる。彼は中国と韓国/朝鮮には固有の地域呼称がない、と喝破した。実は日本もその意味では固有の地域呼称ではないのだが、一応万世一系を貫いているので(ここでは異論は認めない)、たまたま王朝名が地域呼称になっているだけである。ヴェトナム(越南)も似たようなものだが、中国明朝期に認められた王朝名がたまたま地域呼称になって現在に至っている、という次第である。第二次大戦後に国が二つに割れた時に北も南も国号にヴェトナムを入れた上にヴェトナム戦争で北が勝ったからヴェトナムで問題なく通じているだけなのだろう。

何かうまい解決方法はないのだろうか。アフリカにコートジボアールという国がある。訳すると「象牙海岸」なので、政体と合わせて、象牙海岸共和国という言い方もあったらしいが、同国の外務省と大使館が「我が国の呼称は各国語に訳して表現してはならない」との通達を出して、世界中に守らせている。誇り高き大陸中国でさえ音訳でかの国を表現している。できれば同じように世界中にChinaではなく、Zhongguo(中国語の発音上の「中国」)であるとの声明を発して、発音はピンイン方式でも各国語の方式でも構わないと通達を出せばそれですべては解決するのだが、日本のウヨサヨ問題程度でこんな通達を出してくれるとも思えないので、「シナ呼称問題」は永遠に続くのだろうか。

2010年9月 8日 (水)

エマニュエル・トッドに関する備忘録

実はこのブログで一回だけ、エマニュエル・トッドに出演いただいたことがあったのですが、当時は"Qui est M.Todd?"という状態だったのですが、今年に入って現在の地に住み着いてから、トッド絡みの単行本はすべて目を通した。さすがに藤原書店が出版している雑誌『環』のトッドに関する論述は未見である。

その時のトッドの予言は「日本のような国にアメリカ型自由主義モデルに基づいた規制緩和を持ち込むことは、極右勢力の台頭を引き起こすに違いない」というものだったのですが、実現したとも言えるし、外したとも言える。それは自分で理由を述べているように、日本は既に老成しているのが原因ではないか。ただ確かに「ネット右翼」というものの存在は(これが存在するかどうかを論じるとまた長くなるので、ここでは存在すると論じられているものとして扱う)予言の一部として的中したことの証しかもしれない。

今回のエントリーは備忘録なので、トッド関連の書籍(のうち、和訳が出版されたもの)がフランス本国および日本で発売された順番を書き連ねるにとどめる。

フランス本国
『第三惑星』  1983
『世界の幼少期』  1984
『新ヨーロッパ大全』 1992
『移民の運命』  1999
『経済幻想』  1999
『世界の多様性』→『第三惑星』と『世界の幼少期』の合本 1999
『帝国以後』  2002
『文明の接近』  2008
『デモクラシー以後』 2009

日本での翻訳
『新ヨーロッパ大全』 1992・1993
『経済幻想』  1999
『移民の運命』  1999
『帝国以後』  2003
『文明の接近』  2008
『世界の多様性』  2008
『デモクラシー以後』 2009

なおトッドは(少なくとも以前は)EU統合反対論者で、あるところで「2005年までにユーロは崩壊する。しなかったら笑いものにしてもいい」と予言していたが、現在の金融危機においてもフラフラではあるが何とか持ちこたえている。氏は経済学者ではないので、詳細な総括を求めるのは難しいが、このことについての弁解が聞けたら知りたいものである。

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